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  10 ,2020

徒然叢

つれづれと記される雑記ばかりのブログ。たま~に執筆していたりします。

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Category: MistySpell

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ユキノシタ 3話

 簡単で体が温まるもの――鍋に作り置いてあったビーフシチューを温め、簡単にサラダを作る。サラダは温野菜サラダなので後で体が冷えるようなことは無いだろう。ライスなんかも今日の残りが嫌ってほどあるのでそいつもテーブルの上にのせる。
「おまたせ~」
 ちょうど飯の準備が終わった頃、麗音と共に例の少女がやってきた。少女は俺の姿を捉えるとすぐさま俺の目の前に立つ。そしてその場に座り込み――
「あ、あの、このたびは助けていただき大変光栄につかまつるでございまする」
「ちょ、ちょっとまってくれ! 日本語変だし! 」
「ツッコミどころそこなの!? 」
 いきなり低姿勢に土下座を始めた少女。これを止められずにいられるだろうか。いや、無理だ。
「と、とにかくだな。助けたことは気にしなくていいから。こっちもなし崩し的にだし」
「でもでも。こうでもしないとわたしの誠心誠意の気持ちが――はっ!? まさか体で返せとかいうんですか? ごめんなさいです、ちょっとそういうのは……まだまだ清純派でいたいのですよ」
「そうじゃないっての。……はぁ。で、君。名前は? 」
「木下雪姫(ゆき)っていいます」
「雪姫ちゃん、でいいのかな? 俺は――」
「心配しなくてもあたしが教えておいたよ」
「はい、教えてもらっちゃいました。土座衛門さんですよね。古風な名前ですね~」
「違うし!! 」
 俺のツッコミにビックリして雪姫ちゃんはライオンに見つかったウサギのように体をビクッとさせる。
「はにゃ!? 違うんですか? わたしは麗音さんにそう聞きましたけど」
「麗音~!! 」
 殺意の視線を向けるとその対象はやんわりと視線をかわしていた。相変らずたくましいぞマイシスター。
「あはははは。だって雪姫ちゃん本当に信じちゃうんだもん。そのまま放置したくなるでしょ? 」
「だからってなぁ。……雪姫ちゃん、俺の名前は相良浩一。こ・う・い・ち。覚えた? 」
「はい。助けていただいてどうもです」
 彼女は地べたに座ったまま見上げるように、俺は彼女を見下ろすようにまともな挨拶を交わす。
 見慣れた麗音の服に身を纏った少女。普段から色気の無い服を好む麗音だが、どうやら服に色気が無いのではなく素材に色気が無かったようだ。ただのパーカーにジーンズなのだが、黒曜石のような長い黒髪がやけに際立ち色っぽいというかなんというか。同じ服でもこんなに雰囲気が変わるのかと、素材の違いに驚かせてくれる。
「……お兄ちゃん、ちょっと今失礼なこと考えなかった? 」
「いや、別に」
 恐るべき女の感。
「あたしの服だとちょっと大きいみたいだから、その中でも比較的小さいやつを着てもらったんだけど。なんとかなったみたいだね」
「はい。わざわざ服まで貸していただいて……本当になんて感謝すればいいんでしょうか」
「そ、そこまで感謝しなくてもいいと思うな」
 常時ハイテンションの麗音でさえも手こずるニューカマー。なめられないという点では俺も見習いたいところだ。
 雪姫ちゃんはだいぶ落ち着いたらしく、麗音がいっていたような暗さはあまり感じられない。というか本当にさきほどまで深刻そうだったのだろうか。まぁここで考えてもどうなるものでもない。
「とりあえず飯食べよう。せっかく用意したんだ」
「え、でもわたしお金――」
「いいっていいって。どうせ大雪でお客さん来ないんだから。あまってるものを処分しないとね」
「お前もう少し言い方ってもんがあるだろ」
「でも本当のことじゃない。もう、お兄ちゃんったら細かいんだから。ほら、雪姫ちゃん座った座った」
 麗音にされるがまま雪姫ちゃんは食事の置いてある席へと座る。麗音があそこまで言ったのにまだ申し訳なさそうな顔をしたままだ。
 
 ぐぅ~

 可愛い音がなった。俺でもなく、麗音でもなく、雪姫ちゃんのお腹から。途端に顔を真っ赤にする雪姫ちゃん。
「あのですね、これはその~~~~~~~~~!! 」

 彼女の必死さに俺と麗音は笑いをこらえられず、その場で腹を抱えて大爆笑。
「あ、あ、あ~!! 笑いましたね。人間はお腹がすく生き物なんですよ」
「そ、そうだね。はははっ、でもさ、うん。なんていうかタイミングがね……良過ぎるのよ」
「ま、とにかく飯にしようぜ。俺と麗音もまだだしさ」
 まだまだ何か言い足りないようだったが、観念したのか顔を真っ赤にしたまま雪姫ちゃんはじっとテーブルの上を見つめていた。獣を追いかけるような目で。
 そこまで腹が減っていたとは……。

……to be continued

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プロフィール

小椋 叢葦

Author:小椋 叢葦
おぐらそういと読みます。
頻繁に名前が読めないと突っ込まれます。
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移転作業完了しました。更新ペースはまったりですが、よければおいでませ。
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