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  10 ,2020

徒然叢

つれづれと記される雑記ばかりのブログ。たま~に執筆していたりします。

08

Category: MistySpell

Tags: ---

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ユキノシタ 9話

 無我夢中だった。途中経過なんて何一つ覚えてはいない。
 ただ……結果として雪だらけの俺の胸の中に一人の少女がいる。ポカンと呆けた顔をした、お茶目な女の子が。
 彼女に向かっていたトラックもいつの間にか過ぎ去っていた。何事もなかったかのように。やはりトラックは彼女の存在に気がついていなかったらしい。普通ならばクラクションを鳴らすなどするものの、あのトラックはそういった行動を何一つとして起こさなかった。それどころか等速のまま走り続ける始末。やはり日の光が邪魔をして彼女の姿を消していたのだろう。
 速度を落としてなかったのによく助けられたものだ。とっさの行動とはいえ、やった自分が恐ろしい。けど……偽善のような計算された行動ではなく、無意識に出来た自分。それは恐ろしさ以上に誇らしかった。自分のしていることが真っ当な善意だと示せたようで。
「あの、その……えっと…………大丈夫ですか? 」
 おどおどとして様子を窺うように声をかけてくる。その様子があまりにも可愛らしく俺は不覚にも笑ってしまった。
 俺が笑っている意味がわからないらしく、顔を真っ赤にして照れる雪姫ちゃん。余計可愛くなってきた。このままぎゅっと抱きしめるのもありだろうか……(「あ~、お兄ちゃんてばやっぱり女子高生が好きなんだ。このこのっ、ムッツリ青年めっ。ほれっ、さっさといっちゃえ。GOGO!! 」)……いや、なしだな。ここで本能に従ったら負けた気がする。というか囁いてきたのが麗音の姿をした10センチくらいの悪魔って時点で俺はダメだ。
 顔をぶんぶん振ると抱きしめている雪姫ちゃんが意味不明とばかりに不思議そうな顔をした。
「いや、なんでもない。雪姫ちゃんのほうこそ大丈夫? 」
「あっ、はい!! わたしはピンピンしてるでありまする」
 ……やっぱこの子、日本語おかしい。狙っているか素なのか正直図りかねる。一応意思疎通に支障がないので放っておくが。
「そ、それでですね、浩一さん。まず一つ提案がありまして……」
「ん? 」
「できればその……いえ、本当にできればで構わないのですが、離していただけるとうれしかったりなんかしちゃいますのですよ」
 先ほどよりも顔を真っ赤にしても、尻すぼみにごもごと呟く。
 さすがに俺も朴念仁じゃない。彼女が言わんとしてることくらいすぐわかる。悪いね、と一言かけて立ち上がると同時に彼女の体を開放する。そしてそのまま彼女の前に手を差し伸べる。
 どうすればいいのか迷っていたようだが、雪姫ちゃんは悩んだ挙句に俺の手を掴み立ち上がる。
「ほら、雪ついてる」
 昔麗音にやってやったように制服についた雪を叩いて落とす。白くなっていたセーラー服が段々と本来の黒を取り戻した。その途中雪姫ちゃんは恥ずかしそうにしていたが、俺は気にせずそのまま続ける。ここで何もしなかったほうが男として恥ずかしいから。
 ようやく全部とり終わると、次はわたしの番ですね、と言いながら雪姫ちゃんが俺についた雪を払い始めた。ちょっと照れくさい気もするが、無碍にするものなんだ。というか俺もやってしまったのでお相子というか……細かいことは気にするまい。
 されるがままにしていると恥ずかしいので、ちょっとだけ上を向く。気がつけば雪が止んでいた。先ほどまではあれほど降っていたというのに。本当に自然ってやつは気まぐれだ。
 こんな気分のときは一服したい。落ち着いたからだろうか。雪が止んだからだろうか。それとも……自分を褒めてやりたいからだろうか。
 自分の気持ちながら、俺はほとんどのことがよくわからない。それでもハッキリしていることもある。
「あのさ、そんなにベタベタ触らないでくれる。特に尻」
「うひゃらっつ!? 」
 雪姫ちゃんはよくわからない奇声を上げた。
「尻フェチ? 」
「ちちちちちちちちちちちちが、ちがうんですよ~~~! 」
「いや、別に尻フェチを否定する気はないけど」
「聞いてくださいってばぁ~。そのですね、浩一さん」
 意を決したように真剣な眼差しを俺に向けてきた。
 よほどの話なのだろう。俺も気合を入れて彼女に向き直る。
 雪姫ちゃんは自分を落ち着かせる為か深呼吸を始め、そして終わったあとに叫んだ。
「ズボン、破けてますよ」
 ………………
 …………
 ……
 死にたくなった。

……to be continued

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プロフィール

小椋 叢葦

Author:小椋 叢葦
おぐらそういと読みます。
頻繁に名前が読めないと突っ込まれます。
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移転作業完了しました。更新ペースはまったりですが、よければおいでませ。
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